平成25年度の研究の概要

 スーパーエンバイロメントハイスクール研究開発事業
 平成25年度の研究の概要          
                  岡山県立高梁城南高等学校

研究の開始に当たり、計画内容の精査を行い本年度の主たる研究内容を以下の5点にまとめ、計画と研究開発を行いました。

  1. ペレット製造に係る廃棄オガクズの効果的な乾燥についての研究
  2. 廃棄オガクズのペレット化の研究(継続)
  3. 三和土のブリック化の研究(継続)
  4. 三和土を床面に使った生徒・市民の交流温室の設計施工
  5. 既存の菌床きのこ栽培実習を森林教育カリキュラムの一貫として位置づけるための研究

これらの研究実績の概要について項目を対応させて以下に記します。

① 環境科学科林産専攻生の生徒実習として、廃棄オガクズの天日乾燥やそれに伴う含水率の変化の調査を実施しました。この結果として廃棄オガクズの天日乾燥は、オガクズの定期的な攪拌が伴わなければ著しく進展しない事がわかり、この結論を踏まえて本校電気科がオガクズ攪拌の省力化を目的とする、廃棄オガクズ乾燥機の製作についての研究を行いました。この研究では、ドラム缶を使った攪拌機のアイデアが生徒から提案され、インターロック回路を取り入れたシーケンス回路により単相200Vのモータで1分間に6回転する乾燥機が研究・製作されました。乾燥機完成後も、攪拌羽の形状や回転数の改良についての継続研究が行われています。継続研究の結果を待って、実際の効果的な廃棄オガクズ乾燥に使用する予定で、ペレット形成の能率化の一助として期待しています。この研究の内容は、2014高校生テクノフォーラムにおいて生徒発表が行われました。

電気科の研究によるオガクズ乾燥機とその製作の様子

② 廃棄オガクズのペレット化の研究については、ペレタイザーに投入する廃棄オガクズの含水率が概ね20%(湿量基準)以下であれば良好な形状のペレットが安定して生産できることが昨年来の実験により解っています。しかし新たに、生産した廃棄オガクズペレットの燃焼実験にあたってガラス質の不純物(クリンカー)が発生する場合があり、このクリンカー生成のメカニズムについて、廃棄オガクズの含水率や廃棄オガクズの元の樹種といった要因のクリンカー発生に対する可能性について現在研究を進めているところです。クリンカーが発生することにより、ペレットストーブの燃焼の立ち消えなど連続運転に支障を来すことが報告されています。クリンカーは、酸化カリウムK2O、二酸化ケイ素 SiO2、酸化鉄 Fe2O3が多く含まれ、さらに成分元素の種類が多いブラウンペレット(全木ペレット)で形成される可能性があります。一方、燃焼灰の成分として酸化カルシウムCaOが主体となるホワイトペレットではクリンカーや灰塊が形成されにくいという報告があります。

ペレットの燃焼実験で発生したガラス質の不純物(クリンカー)

③ 三和土のブリック化については、昨年の一軸圧縮強度の試験結果等を踏まえた東京理科大学小布施町まちづくり研究所小布施町地域創生部門地域整備グループ勝亦達夫主任との協議を本年度も行い、その形状は牛乳紙パックを利用したものとして、ブリックの量産を生徒実習を通じて行いました。実際にブリックの量産を行うと、それまでの実験的ブリック形成では見られなかった、品質のばらつきが予想以上に顕著であり、昨年度の一軸圧縮強度試験の結果で得た材料配合比についての自信が揺らぐほどの内容でした。この状況に加え、昨年度から継続していた三和土の文献研究において、明治後期の三和土職人服部長七による全国での港湾土木工事の施工事実を知り、彼の手がけた三和土の材料配合や施工法について調査する目的で、当時の文献の残る明治用水土地改良区の岩井和男専任員を訪ねました。現在は生徒実習を通じて、入手した文献等により長七たたきの材料配合の調査研究を行っているところです。

ブリック品質の違い(左・中)と服部長七の作った人造石(三和土)

④ ③の成果である三和土ブリックを用いて、生徒・市民の交流温室の床面整備を行う計画で環境科学科3年生の課題研究をその研究主体として設定し、2,3年生の教科実習で研究開発を行いました。また、三和土による交流温室の整備の計画・準備として本校デザイン科とともに、その意匠や施工方法について研究しました。③でも述べたとおり、昨年度からの三和土の材料配合比の研究結果に基づいて三和土のブリックを量産する実習を続けてきましたが、材料配合や施工手順は同一であっても完成するブリックの品質には大きな差が生じ、歩留まり(床面施工に耐え得る品質のブリックが出来上がる割合)の低い状況が続きました。職人の技術に裏打ちされた伝統的技法は、材料やその配合が同じであれば結果として同じ製品が出来上がるというわけでは決してなく、材料配合よりも格段に大きな要素として、作業の技術や丁寧さといったものが存在することを改めて痛感する結果でした。このことは、研究自体においては計画の進行を阻害するものでしたが、この事業を通じて環境や社会について学ぶ生徒にとっては学習の題材として素晴らしいものであり、このことをテーマとして各学年でディスカッションも行いました。
三和土ブリックが床面施工の主体として使用できないことから、改めて施工計画の練り直しを行い、実験による三和土の材料配合でのベタ打ち施工に変更することとしました。ベタ打ち施工への変更に伴う床面デザインの変更協議をデザイン科と行い、施工する範囲を木材で格子状に区切る意匠の提案を受けました。この施工方法によれば、床面のデザイン性が向上するばかりでなく、格子で区切られたそれぞれの区画ごとに三和土の打設施工ができる利点もあります。
また温室内既存の排水溝は、その中にフリューム管を天地逆で敷設することにより機能を確保することにしました。加えて、施工の趣旨に伝統的技法も挙げていることから、寸法の足りない格子組部材について継ぎ手加工を行うことにしました。継ぎ手加工の研究や資料の収集を通して、今回の施工では比較的作業の簡易な「いすか継ぎ」を採用し、施工しました。現在は、完成した格子組中に三和土を叩き込む施工を始めているところです。

排水溝の処理と「いすか継ぎ」

床面の格子組施工と三和土の叩き込み

また温室周辺の施工として、閉園したチボリ公園から頂いた枕木による温室への誘導門の整備や、竹植栽準備のフリューム管敷設などの施工も並行して行っています。

枕木の再利用による交流温室の周辺整備

加えて、温室周辺の施工を進めるにあたり、そのバリアフリー化を目指すことから、当事業の外部研究協力者である山陽学園大学総合人間学部の澁谷俊彦教授にバリアフリーやユニバーサルデザインについての講演を頂き、基本的な知識の構築を目指しました。

澁谷教授の講演の様子

⑤ 廃棄オガクズの循環利用が本研究のテーマであることから、従来から本校で行っているヒラタケ栽培実習を単なる林産物の栽培教育にとどまらせず、広く森林利用や環境教育の一環として位置付けるためのカリキュラム研究を昨年度より行ってきました。岡山県農林水産総合センター森林研究所木材加工研究室河崎弥生室長をはじめとする所員の方と、森林や木材を核とする環境教育の効果的な内容について、主に木材加工研究室と共同して行う生徒実習に関する共同研究を続けています。昨年度の生徒実習の内容や問題点を踏まえ、本年度は新たな取り組みを含む以下の生徒実習を計画・実施しました。ア 環境科学科1年生(40名)を対象とした校外実習(5月28日)
午前は木材加工研究室を訪問し、木材の具体的な利用方法、岡山県の森林・林業及び木材
産業についての講義の後、所内施設見学。午後は岡山県森林組合連合会勝山木材共販所、
勝山木材市場株式会社、勝山まちなみ保存地区の見学を行いました。

木材加工研究室での講義の様子と勝山木材市場の見学

イ 環境科学科2年生(40名)を対象とした校外実習(9月18日)
実際の造林地の見学と、地域の特色を活かす実例の体験を趣旨として本年度新たに計画し
ました。午前は真庭市清谷「稲荷平のヒノキ林」を見学し、講師として地元在住の井原さんと山主の戸田さんより森林から林業経営までの幅広い内容の説明をいただきました。午後は富原婦人森林研究クラブとの交流会を行い、昼食には薬草カレーと葛の花ゼリーをいただき、クラブが取り組まれた里山宝探しゼミナールの苦労談や、くず新芽ブレンド茶開発の経緯などについて話を伺いました。

ウ 環境科学科3年生(20名)を対象とした校外実習(6月18日)
生物環境類型20名で木材加工研究室を訪問し、木材に関する事に特化して研修を行いました。午前は、「家の中での木づかい」と称するアクティビティやクイズ、実験を取り入れた講義が行われ、木材に関する知識を深めました。午後は木工体験として所員の方のご指導により椅子を作成しました。